マイケル・ルイスの感染症に関する新作「最悪の予感」は東京でのコロナ感染者が4000人を超えた今、読んでおく必要があると考えます。

マネーボールで著名なノンフィクション作家、マイケル・ルイスの新作はコロナ関連です。

コロナ以前から感染症の危険性についていち早く気づいたアメリカの研究者や医師などがどうやってその危険性を色々な人に知らせたり、ホワイトハウスで対策を立てたり、数理シミュレーションをしたかという話が前半になります。

さらに後半は、せっかくそのような準備があったのにも関わらずなかなか色々な人たちが理解をしなかったり、特に感染症対策について軽んじていたトランプ政権の時代にコロナが始まってしまって、いかにアメリカ内にその影響もあり、前半のような人たちの活躍や警告にもかかわらず、コロナが拡散したかということについてまとめられています。

私が最も衝撃的だったのは、過去の感染症における数理モデルを作ったり、過去のデータを調べてコンピューターシミュレーションにかけると、たったひとつの決め手となる感染症対策はありませんが、その中でも最も盲点になりつつも最も必要な対策として
「小学校閉鎖の必要性」
を強く示唆していたという話です。

これはなぜかと言うと、感染経路として小学校内での児童同士の子供の接触の影響が非常に大きく、そこから家庭内感染が始まるからです。元々小学校がスペース的にも非常に密に作られていることに加えて、子供同士はいつでも接触し続けていて、ソーシャルディスタンスの概念がないためです。

どうしても大人が感染症の対策を考えると、このような子供の視点に立った部分が盲点になってしまうという指摘をしています。

そういう意味では日本がいち早くコロナ対策として、小学校中学校を始めとした学校全般の登校制限を行いましたが、あれば必ずしも間違った政策ではなかったわけです。

実際、本の中でも描かれていますが、アメリカでも研究チームが数理モデルに基づいて、最初にこのような学校閉鎖について提案をしたところ、非常に反発が強くまた直感的に皆が理解してくれないので実行が大変だったということでした。日本でも全く同じような反発があった事を皆さんも覚えてると思います。

感染症対策についてスイスチーズの穴のような表現をしていまして、どの対策も決め手に欠けていて抜け漏れがあるのだけれども、穴の空いてるスイスチーズを何枚も重ねるといつかは穴がなくなるように、様々な感染症対策を考えなければいけないというのがこの本の大きなメッセージのひとつです。

すなわちワクチンと感染者の隔離だけでは実は不十分であり、また緊急事態宣言や飲食店の早期閉店などを行っても感性症が防げていないということは、まだどこかに何かの穴が開いてる可能性が高いのです。

私は残念ながら感性症の専門家ではないので、その穴がどこかということまでは分かりませんが、ただ緊急事態宣言を言い続け、これまでと同じ政策を取り続けるのではその穴は埋まらないと考えます。